去年からOpenAIが話題になっている。しかし、AI自体が話題になったのはもっと前からで、少なくとも1950年代にはAIの概念が誕生している。東西冷戦の渦中にあって機密文書に記されたロシア語を英語に自動翻訳する需要が誕生し、言語の分析が進んだ。この時点ではあくまで軍事利用である。
そして、軍事利用は一つの法則がある。
採算度外視で開発した結果が採算の取れる民間事業となるという法則である。
AIも例外ではない。
アメリカと西側諸国の防衛のために採算度外視で軍事費を注ぎ込んで研究した結果、あたかも会話するかのように言語を訳すプログラムができあがった。そのプログラムを動かすためのコンピュータも安価になってきた。デバイスも広く普及するようになった。そして、プログラムに求める会話は、軍事機密の翻訳ではなく、話し相手になった。
テレビの電源を入れる、今日の天気予報を聞く、これからのスケジュールを確認する、そうした日常生活の当たり前が生活の中に浸透してきた。
本書刊行は2019年であり、この時点ではまだアレクサとシリとの対決であった。それから5年、対決の舞台に昇るプレイヤーの数は激増し、話しかけて来た相手に言葉で返すだけでなく、文章を返し、絵画を返し、動画を返すまでになっている。
本書は2019年時点では最新のAI事情に至るまでの経緯を記した本であった。現在では、AI事情の推移の途中までを記した書籍になっている。しかし、全くの無価値なわけではない。現在のAI技術の土台が本書に存在している。そして、現在のAI事情にかかわる人物の多くは本書に既に存在しており、今まさにこの瞬間もAIを発展させ続けている。
未来はどうなるか?
本書と現在との間を埋め、その延長線を見つめると、未来が見えてくるはずである。