いささめに読書記録をひとしずく

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おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

上杉和央著「歴史は景観から読み解ける:はじめての歴史地理学」(ベレ出版)

歴史は景観から読み解ける

国破れて山河ありともいうが、山や川といった自然の産物だけでなく、人工的なモノ、たとえば道路を見ても、そこに歴史はやどっている。

たとえばどこにでもある市街地の、どこにでもあるような、一見すると十字路、よく見ると十字路ではなく、よく見ると斜めに走る細い道がある、すなわち、五叉路だという場所がある。

ここまではいい。問題はなぜ五叉路なのか?

多くの場合、歴史を振り返ると斜めに走る道のほうがメインで、十字路をなす道は戦後の区画整理の産物である。

あるいは観光名所として有名な天橋立。この天橋立がかつては違う様相であったと知ったなら驚く人は多いであろう。雪舟の描いた風景画や戦前の地図を眺めると、天橋立は年々伸びていることに気づかされる。これなどは国破れて山河ありとは逆に自然のほうも歴史能美出す時間の流れとは無縁であることを示す例である。

当たり前と思っている光景は、現在の光景に至った理由がある。その理由のことを歴史という。

地図に描かれた大地も海洋も現在の様相を示している。そして、現在の大地は、そして海洋は、それまでの歴史の積み重ねが生みだした様相である。

それを本書は見事に描き出している。