德薙零己の読書記録

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ジョン・ガーズマ&マイケル・ダントニオ著,有賀裕子訳「女神的リーダーシップ:世界を変えるのは、女性と「女性のように考える」男性である」(プレジデント社)

女神的リーダーシップ 世界を変えるのは、女性と「女性のように考える」男性である

男らしい

男気あふれる

女々しい

女の腐ったような

とりあえず形容の言葉を挙げてみたが、そして、挙げてみた本人はその形容に同意できていないのだが、それでも概念として男性的な、あるいは女性的な形容というものは存在する。

その形容を、本署は破壊する。リーダーシップについての新たな視点を提供しているのが本署であるが、本署は提唱の中心に「女性的」な資質を置くことで、従来のリーダーシップ理論に挑戦しているのが大きな特色である。

何と言っても、研究の広範さと深さが圧倒させられる。世界13カ国、6万4000人を対象とした調査により、本書の著者の両名の主張は普遍的な事実を反映していることを示しているのだ。「誠実」「利他的」「共感力がある」「表現力豊か」「忍耐強い」などの「女性的」とされる資質が成功するリーダーに共通する特徴であるという事実が。

その上、本書が提唱する「女神的リーダーシップ」は、新たなリーダーシップの形を示している。従来であれば「女性的」、すなわち、あまり重視されてこなかった価値観が反映されたリーダーシップのことであり、その特徴として、「つながり」「謙虚」「率直」「忍耐」「共感」「信頼」「寛容」「柔軟性」「弱さ」「調和」が挙げられる。

それこそがこれからのリーダーシップの在り方なのだ。

重視すべきは「女性」ではなく「女性的」という点である。すなわち、性別や性自認に関係なく誰もが保持し発揮することのできる能力であり、リーダーシップを発揮するのに性別や性自認など関係ないのである。

本書は、リーダーシップ、ジェンダーダイナミクス、そしてグローバルな問題解決の未来に関心のある人にとって、示唆に富み、洞察に富んだ一冊である。よりバランスのとれた、共感的で協力的なリーダーシップのあり方について、希望に満ちたビジョンを提示するであろう。