世界的ベストセラー「銃・病原菌・鉄」の作者であるジャレド・ダイアモンド博士の次回作であり、ダイアモンド博士は本書において、人類の過去の文明がどのような環境変化にどう対応し、その結果どうなったのか、またどのような要因で消え去ったのかの事例を挙げて分析している。
著者は本書で文明崩壊に寄与する主な要因として以下の五つを挙げている。すなわち、
- 気候変動
- 敵対する相手
- 重要な商取引相手の喪失
- 環境破壊
- 環境課題への適応失敗
の五つである。
また、人類が現在直面している環境問題のうち、過去の文明崩壊に寄与した要因として以下を挙げている。
- 森林破壊や居住地環境の破壊
- 土壌の侵食、塩害、地力低下
- 水資源問題
- 過剰な狩猟
- 過剰な漁業
- 外来種の問題
- 人口過剰
さらに、新規の潜在的リスク要因として以下を挙げている。
- 人為的な原因による気候変動
- 環境中への有毒物質蓄積
- エネルギー不足
- 光合成能力利用の上限到達
本書で挙げられている顕著な例としてはイースター島がある。もともと木々の生い茂る島であったイースター島は、過剰な人口増加と資源の乱用によって自己破壊的な経路を辿ってしまった。森林が伐採され、土壌が侵食され、野生生物が絶滅し、最終的には社会が崩壊してしまったのだ。環境問題への適応失敗というダイアモンド博士が指摘する5つの崩壊要因の一つを示している。
また、日本人として忘れてはならないのが江戸時代の日本である。あの時代の日本はほとんど人口が増えなかった。そこで注意すべきは歪な男女比である。どの社会でも男女比は半々だが、江戸時代は男女比が2:1であった。そして、江戸時代に間引きの習慣。これが意味するところは容易に想像できるであろう。
そのどちらも恐怖を感じずにはいられないが、本書はそれですらエピソードの一つなのだ。人類はそれらすらその他大勢になってしまうほどに残酷な歴史が存在しており、著者は本書において社会には繁栄にも滅亡にもつながる選択をする主体性があると述べている。上記のイースター島や江戸時代の日本だけでなく、古代マヤ人やオーストラリア、そしてルワンダといった現代の例まで、いくつかの社会のケーススタディを検証し、その成功や失敗に貢献したさまざまな要因を示している。
環境問題に直面した際に、十分な情報に基づいた選択をすることの重要性である。社会が崩壊を避けるためには、資源の限界を認識し、持続可能な方法を開発する必要があるいうのが本書の主張だ。社会の運命を決定する上で、政治的リーダーシップ、協力、変化する状況への適応能力が果たす役割も強調している。
「銃・病原菌・鉄」で本書の著者を知った人は、同書の著者の次回作として手に取ったであろう。その期待を本書は裏切らない。持続可能性、資源管理、社会の意思決定など、今日の世界が直面する課題に対する貴重な洞察を与えてくれる。歴史の教訓を理解し、豊かな未来を確かなものにするために私たちがなすべき選択に関心のある人にとって、本書は必読の書である。