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奥窪優木著「転売ヤー:闇の経済学」(新潮新書)

転売ヤー 闇の経済学(新潮新書)

転売を問題と思っている人はたくさんいる。しかし、転売をしようとする人、いわゆる転売ヤーが減ることはあっても消えることはない。どんな時代であろうと、どんな環境とであろうと、転売は必ず存在する。なにしろナチの強制収容所の中ですら転売が存在していたのであるから、これはもう、経済の自然法則すべき話である。

しかし、安定した経済と高い民度の社会が形成されると、多くの人は転売に手を出したりはしない。なぜか?

ハイリスクローリターンだからである。

本書はどのような転売のメカニズムが存在し、転売ヤーがどのような考えのもとで行動し、実際にどれぐらいの儲けを得ているのかを容赦なく書き記している。

そして、本書を読んだ人はこのように感じるはずである。

「これで本当に儲かるとでも思っているのか?」という呆れである。

真面目に働くほうがはるかに儲かるし、後ろ指指されることもないし、何より捕まることもない。転売に成功すれば多少の金銭を得られもするが、その金銭は人生をぶっ壊してまで得られる金額としては全く見合っていない。同じ時間働いていればもっと稼げる。

それなのにどうして転売に身を投じるのか?

儲かると思い込んでいる人がいて、その人達を転売に組み込むことで儲かる仕組みを構築しているのがいるのだ。しかもそれは、国境を簡単に越えている。日本国内をターゲットとしたビジネスであるのに、需要が国境を越え、国外の需要に応えるための転売まで成立している。本書で多く取り上げているのは日本国内の転売屋よりも国外から日本にやって来る転売ヤーにあり、この問題に日本は対処できないでいるのが現状である。

本書を読むと多少なりともゼノフォビアに陥りそうになると同時に、中国共産党ベトナム共産党の無策ぶりに怒りを感じるようにもなる。

あるいは、共産党という存在そのものが日本だけでなくどこの国でも愚かなのだろうか。まあ、それはとっくに証明されていることでもあるのだが……