本書は2019年4月に日本経済新聞出版社より刊行された「ブラック職場があなたを殺す」を改題・修正した上で2021年に刊行された書籍であるが、この修正とタイムラグに大きな意味がある。
その間に全世界で働き方が変わったのだ。
具体的に言うと、出勤という概念が減り、自宅で働く人も珍しくなくなったのだ。毎日自宅にいながら仕事をこなす、あるいは週に1日か2日が出勤、残りは自宅での勤務となった人も珍しくなくなった。
COVID-19という誰も予期しなかった出来事に直面したために修正せざるをえなくなった働き方、この修正が極めて大きなポイントなのである。職場が個人に与えるストレスに加え、家庭が生み出すストレスもまた見逃せないのだ。仕事と家庭の両立と言えば聞こえは良いが、一人でどうこうできるレベルではない要件を一人で背負わねならなくなり、疲弊し、倒れるというケースも頻発するようになった。
ならば、以前と同じ仕事環境が復活すれば問題は解決するのか?
そう甘くはない。以前の仕事環境に存在していたストレスは時間が経過しても消えていないのだ。
雇用の不安定さ、過剰な責任と業務を課すスケジュール、時間的拘束の長さ、裁量の乏しさ、こうしたストレス源にいかにして立ち向かい、解決へと向かわせるのか?
そのヒントは本書にある。容易ではないが道標は存在している。