ビットコインがどのように誕生し、どのようなセキュリティを構えているのか、そして、Mt.Goxの問題についてまとめた一冊である。なお、本書刊行は2016年であり、現在から見ると必ずしも合致する分析とならないところはあるが、本書は2016年時点において最上級の、そして現在でもトップクラスの、ビットコインに関する分析の一冊である。
ビットコインは、詐欺商法というわけではない。しかし、既存の貨幣を凌駕するほどの存在になるとも思えない。現在のビジネスニュースでは、ドル円相場やユーロ円相場と同様にビットコインの相場やビットコイン先物取引価格を取り上げているが、本書刊行時点に予測されていたほどの価値とまでは至っていない。
ただ、ビットコインの存在価値は、既存貨幣との持つ信用との相対的なものとして君臨していることは無視できる話ではない。
1万円札の価値は、日本中どこに行っても1万円である。だが、国の信用が失われ、貨幣の信用が失われるとどうなるか?
ビットコインは国に基づかない存在であるがために不安定に見えるが、国の信用が失われてハイパーインフレが起こり、手元の1万円札がうまい棒1本の価値しか無くなってしまったら……
この杞憂に対する明瞭な答えは、無い。