いささめに読書記録をひとしずく

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池上俊一著「魔女狩りのヨーロッパ史」(岩波新書)

魔女狩りのヨーロッパ史 (岩波新書)

今から50年以上前、連合赤軍によるリンチ殺人事件が繰り広げられてた。山中の山小屋で合計12名もの仲間を、1人、また1人と殴り殺していった凄惨な事件である。殴り殺された理由の中に正当な理由は無い。

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今から60年近く前、文化大革命という大量殺戮が中国全土で繰り広げられた。当初は毛沢東にとって都合の悪い人物が標的になり、次第に純粋な毛沢東主義者であると証明できなくなったなら標的となり、毛沢東肖像画の載った人民日報を落としてしまったというだけで標的になり、次々と虐殺されていった。

本書に取り上げられている「魔女狩り」は現代人が過去の時代を嗤うネタではない。現代人も落ちぶれてしまいかねない愚行である。また、暗黒の中世と言われる時代よりもルネサンスを経た後の時代のほうが魔女狩りの被害が激しくなった一方、同時代でも魔女狩りの無意味さを指摘し、魔女とされた女性の全てが、あるいは男性もまた無罪であると判断した人達もいた。

こうした集団ヒステリーからくる虐殺はいったいどこから起こったのか。人類普遍の真理なのか。その答えは斬何ながらわからない。本書はただただ、近世をピークとしてヨーロッパ各地で繰り広げられていた魔女狩りという名の虐殺を描き出している一冊である。魔女であるとの自白を得るための拷問は本書の内容をここに転記することすら躊躇う内容である。しかし、もっと恐ろしいのは魔女だと告発する側とされる側との関係、そして、どのような経緯で告発するに至ったのかという流れである。

今の時代にも当たり前に見られることなのだ。

本書は魔女狩りを描いている書籍である。だが、本書に記されている内容は現在でも変わることのない人間社会の現実である。

だからこそ恐ろしい。