理論と現実が食い違っているとき、間違っているのは理論のほうである。
誰もが当たり前と、常識だと思っていることが結果を伴っていない場合、疑うべきは当たり前であるという概念、常識という理論である。
本書は、人が、そして組織が成功するために常識とされていることが、当たり前とされていることが、実際には間違っていると示す一冊である。
たとえば、学業での成功と経済的成功の関係である。一般に、学校生活における優秀さがそのまま社会における優秀さにつながると見做されるが、著者はその考えを否定する。卒業生総代は構造化された環境では優秀だが、現実世界での成功にはしばしばリスクテイクと創造性が必要であり、それは必ずしも学業での好成績と合致するものではない。
GRITで示された最後までやり遂げるという考えも、本書は必ずしも全面同調しているわけはない。海軍特殊部隊や災害を生き延びた人々から得た教訓から、グリットとレジリエンスの重要性を強調している。バーカーは、困難を耐え抜く力が長期的な成功に不可欠であると主張している。しかし、同時に協調性と寛大さが成功につながることを本書は示す。それはビジネスだけではない。犯罪組織でも“成功”につながる。
同類の話になるが、自信こそが成功の鍵であるという考えに対し本書は異議を唱えている。それより自己認識と適応力がより重要な特性であることを示唆している。
また、歴史上の人物に目を向けるとワークライフバランスが見えてくる。チンギス・ハーンやアルベルト・アインシュタインといった歴史上の人物を例に、ワークライフバランスを実現するための戦略を提示。彼は、仕事と私生活のバランスを見つけることが、全体的な幸福のために不可欠であることを示唆している。
成功に対する新鮮な視点を提供する説得力のある読み物として、本書はもっと多くの人に読んで貰いたい一冊である。