德薙零己の読書記録

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小野正敏,五味文彦,萩原三雄編「遺跡に読む中世史(考古学と中世史研究)」(高志書院)

本書は、考古学と中世史研究の交差点に位置する一冊である。遺跡から読み解くことができる中世の歴史についての洞察を提供し、発掘された建物遺構の解釈や出土文字史料の見方、金山遺跡における「場」と「景観」など、多岐にわたるトピックを扱っており、たとえば、富島義幸氏の著した「発掘された建物遺構をどのように読み解くか:中世住宅発掘遺構の研究方法をめぐって」での絵巻物と発掘との差異の指摘は多くの人が比喩的な意味で叩きのめされることとなるであろう。

編集者である小野正敏、五味文彦、萩原三雄の三氏は、それぞれが専門家であり、そうした専門家の知識と経験が本書を非常に価値あるリソースへと昇華させている。複雑なテーマを明確かつ理解しやすい方法で提示し、中世の日本の生活と文化をより深く理解するのを助けてくれる。

考古学は石器時代縄文時代だけを扱う学問ではない。中世史は文献資料だけで学ぶ学問ではない。本書は中世に対する新たな視点を提供し、我々が過去を理解する方法を再考させる一冊である。