德薙零己の読書記録

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大名力著「英語の発音と綴り:なぜwalkがウォークで、workがワークなのか」(中公新書)

それまで西洋系諸語のうち学んできた言語が英語だけであるという人が、大学に入ってはじめてドイツ語を学ぶと、あるいは、はじめてラテン語を学ぶと、最初にスペルと発音との関係で驚く。

「そのまま読んでいいの!」と。

I have a note. を「イ・ハヴェ・ア・ノテ」とは読まない。しかし、Ich habe eine Notiz. は「イヒ・ハベ・アイネ・ノティツ」と読むし、Annotare habeo. は「アンノタレ・ハベオ」と読む。無論、カタカナ表記がそのまま通用するわけではない。そのように発音すれば相手は聞き取ってくれるという話であり、正しい発音ではない。それでも、英語の表記の通りに発音したとき都比べれば正しい発音近いし、その音を聞き取ってくれる。英語しか話せない人に「イ・ハヴェ・ア・ノテ」と言ったところで、誰もその音が I have a note. のことだとは理解しない。

本書は、英語の発音と綴りの仕組みを基本から解説しる一冊であり、まさに冬休みのタイミングだからこそ、来年一月や二月に受験を控えている人に読んでいただきたい一冊である。母音と子音、開音節と閉音節、母音字の読み方、マジックeなど、学校では習わない、しかし、英語の入試におけるリスニング問題や発音に関連する問題において極めて有用となる一冊である。英語の発音と綴りの仕組みについて説明している本書の記述、英語を学ぶのが好きな人にとって非常に重要であるだけでなく、前述のように受験を控えているなど英語を学ばねばならない人にとっても英語の発音とスペリングを理解するための素晴らしいリソースとなっている。

著者の大名力氏は、読者が英語の発音と綴りのパターンを理解するのを助けるために、豊富な例と詳細な説明を提供している。それらの例と説明は英語の歴史、特に英語表記の歴史も踏まえていることから、英語の学習だけでなく中世から近世にかけてのイギリス文化を学ぶ上でも本書は有用である。その上で、読者は英語の発音と綴りが一貫性を持っていることを理解することができる。

純粋な読書としても、英語の発音と綴りが不思議に思える人々にとって、規則性を理解するための一助となる一冊である。それは、英語の発音と綴りの背後にある複雑さと深さを明らかにするための鍵となるはずである。