德薙零己の読書記録

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グレゴリー・クラーク著,久保恵美子訳「格差の世界経済史」(日経BP)

ガチャという言葉はあまり好きではないが、豊かな社会階級に生まれた人間は、そうでない人間よりも豊かになる、すなわち生まれのガチャが本書のテーマである。「機会の平等」を建国の理念にしたアメリカも、アメリカとは対極にあるスウェーデンも、中世イングランドも近現代のイギリスも、そしてインド、中国、日本、韓国も同じであると本書は述べている。

著者はどのような論拠からそのように考えたか?

クラーク氏は、世界各国の歴史データを分析し、どの国でも支配階級と下層階級の名前はあまり変化がないこと、つまり「格差」が維持されてきたという結論を導き出したのである。

これは、社会経済学、歴史学、そして人類学の観点から見ても非常に興味深い洞察を提供するものある。我々がどのようにして現在の経済状況に至ったのか、そしてそれがどのようにして維持されてきたのかを理解するための重要な手がかりとなっているからである。

本書の主たる読者は歴史を学ぶ者あるいは経済を学ぶ者であろうが、我々自身の社会経済的地位がどのように構築され維持されてきたかを理解するための重要な一冊である。