德薙零己の読書記録

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飯倉章(著)「第一次世界大戦と日本参戦: 揺らぐ日英同盟と日独の攻防」(吉川弘文館)

日本史における第一次世界大戦の扱いは微妙である。

第二次世界大戦は無論、日清戦争日露戦争も日本史に於いては重要な役割を占め、歴史の教科書でも多くのページが取り上げられている。歴史の教科書だけでなく小説などの文学作品や、映画などの映像作品でも、日本国内で作成されたコンテンツにおいて第一次世界大戦を舞台とする作品はあまり多くない。

一方で、歴史ドキュメンタリーで第一次世界大戦が取り上げられることはよくある。ただし、取り上げられるのはヨーロッパ戦線であったり、あるいはロシア革命であったり、近年のCOVID-19の影響もあってスペイン風邪に着目することはあっても、参戦国としての日本を取り上げることは少ない。

その、あまり取り上げられることのない日本の第一次世界大戦参戦と戦場の様子を描いたのが本書である。

日本がなぜ早期に参戦したのか、日英同盟の変遷や日中の対立、対ドイツ戦としての青島攻囲戦や南洋群島占領の経緯と意義、戦後の国際会議での日本の立場などを、豊富な史料や資料に基づいて検証しており、これまであまり着目されることの無かった第一次世界大戦時の日本についてかなり詳しく記載している。

本書を読むことで、第一次世界大戦における日本の役割や影響に対する深い知識を得ると同時に、日本近現代史における重要な局面を理解する助けになるはずである。