自分がもし、2002年の原著刊行時に本作を読んでいたなら、現代経済についての問題と解説について記した本として捉えたであろう。
2021年の現在に、新版翻訳となった本書を読んだいま、経済を学ぶと同時に、20世紀の経済史を学ぶ本でもあると感じる。
原書刊行から19年という歳月は、世界の経済の流れを大きく変えてしまった。日本経済は経済成長を止めてしまったがために追い抜かれ、原書刊行時は市場経済へと移行し始めた国家であった中国にGDP世界2位の座を明け渡し、その差は大きく開くばかりである。
現在の日本の経済を上向かせるのに何が必要なのか。本書の中で記されている他国の事例は参考になるであろう。たとえばニュージーランドの事例、たとえば人民公社を極秘裏に抜け出した中国のとある村の事例、たとえば共産主義を離脱した国々の灰色の記憶の事例が。
私が毎日ブログで更新している平安時代も、特に源平合戦期も、経済の側面で考えると、いかにして苦境にあえぐ暮らしから脱して豊かな暮らしを取り戻すかの争いであったと言える。
事例は違えど、歴史は繰り返す。
あと、本書を読むにあたって注意点が1つ。
本書は睡眠泥棒。ページをめくったら最後、読み終わるまで本を閉じることができなくなる。
