德薙零己の読書記録

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

2023-04-03から1日間の記事一覧

「嘘八百」シリーズ

広告というものは同時代に向けて作られ、同時代に向けて送り出されるものである。 そのため、後世の人間にとっては理解不能であったり、理解はできるもののそれはあくまでも歴史上の出来事しての理解であったりといった、同時代の人が体感できたような広告を…

鈴木淳著「関東大震災:消防・医療・ボランティアから検証する」

平成23(2011)年3月11日の東日本大震災において、埼玉高速鉄道と、埼玉高速鉄道の乗り入れる地下鉄南北線は比較的早い段階で復旧した。そして、多くの人が埼玉高速鉄道を使って帰路に就いた。浦和美園駅までたどり着くことはできてもそこから先は無かった。バ…

代珂著「満州国のラジオ放送」

ラジオは大正時代に始まる。 そして、満州国とは昭和に入ってから生まれた。ならば満州国にだってラジオ放送はあったのでは? 結論から言うと、あった。 あったならば、満州国のラジオはどのような放送だったのか?その答えは、代珂氏の著した「満州国のラジ…

マシュー・サイド著「多様性の科学:画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織」

経営学でよく取り上げられる有名な話がある。あるオーケストラはメンバーが全員白人男性であった。オーディションでは白人男性だけが合格するのだ。審査する人は「優秀な奏者を採用しているだけだ」と言ったが、その考えはただ一つの対策で終焉を迎えた。志…

速水融著「歴史人口学で見た日本 増補版」

平安時代を歴史小説で全て書くという野望をはじめてから15年目になる。その間、何度となく直面してきたのが、今から1000年前は現在の人口構成ではないという、当たり前であるが、同時に見落としがちになってしまう事実である。 たとえば、なぜ行政区分として…

イザベル・ウィルカーソン著「カースト」

イザベル・ウィルカーソン氏が著した「カースト」(岩波書店 ,2022年)を読むと、理由より先に感情に基づいた序列があって、序列に従うことを是とするために様々な理屈を作り上げるというのが、哀しいことに人類の一般傾向なのかと痛感する。 平安時代叢書の…

サッカーと全体主義

去年のサッカーW杯のときにTwitterに投稿された日本共産党の議員によるサッカー日本代表への非難の言葉は、当時のTLを賑わせた。結論から言うと、自分達の過去を歴史として学ばなかった議員の生み出した軽挙な言葉であると断じるしかない。 サッカーを愛する…

ヘレン・プラックローズ,ジェームズ・リンゼイ著「『社会正義』はいつも正しい:人種、ジェンダー、アイデンティティにまつわる捏造のすべて」

去年の12月に早川書房編集部が発表したことについて、私は失望していた。 www.hayakawa-online.co.jp しかし、そのタイミングで私はそのことについて何も記さなかった。なぜなら、その時点ではまだこの本を読んでいなかったから。 しかし、12月9日に読み終え…

マイケル・リンド著「新しい階級闘争:大都市エリートから民主主義を守る」

現在社会の問題の根源を本書は、左右での争いではなく、社会的な上下が生み出す対立であると説いている。そう言えばマルクスは人間の社会の歴史を階級闘争の歴史であると説いたが、同時に段階発展論を展開することで最終的な帰結を示すともした。楽観的な考…

コカ・コーラ伝説

他の記事と趣向を変えて。 でも、本の紹介であることは一緒。 【コカ・コーラ伝説①】 「頭痛に効く薬を開発する!」↓「できた! この液体が頭痛に効くはずだ!」↓「だめだ。頭痛に全然効かない」↓「でも、飲んでみると美味しいんだよなあ」↓「よしっ! 薬は…

牧村康正著「『仮面』に魅せられた男たち」

映画が日本に伝来したとき、映画は舞台演劇より一段下に、映画俳優は舞台俳優より一段下に見られた。 テレビが日本に普及したとき、テレビは映画より一段下に、テレビタレントは映画俳優より一段下に見られた。 同じテレビタレントでも上下関係があり、同じ…

自分で自分の本を宣伝

サイトリリースと同時にまずは3本、4冊の書籍を紹介したが、実は私自身もKindleで作品を公開している。 現在のところ、公開している作品はこちら。 それぞれのシリーズの第1巻です。 おじいちゃんといっしょ 1: あの人は誰? 作者:德薙零己 Amazon イノベー…

木本好信「奈良時代:律令国家の黄金期と熾烈な権力闘争」

平安時代を全部書くという野望のもと歴史小説「平安時代叢書」を書き始めてから15年目を迎え、今になって平安時代は一つ前の時代である奈良時代とで何が違うのかという視点で振り返ると、理想と現実という視点に気づかされる。 奈良時代が終わって平安時代に…

大石慎三郎著「天明の浅間山大噴火 日本のポンペイ・鎌原村発掘」

杉田玄白は天明三(1783)年の浅間山噴火をこのように書き記す。7月9日の午後から江戸川の水が濁りだし、次第に、根から引っこ抜けた大木が、人家の材木が、そして家の中の家具や日用品がどれもこれも粉々に砕け散って流れてきた。その中には手足のちぎれた遺…

東大作著『ウクライナ戦争をどう終わらせるか』

去年の2月24日、ロシアがウクライナへの侵略戦争を始めた。 以前からロシアへの怒りがはあったが、残念ながらウクライナの運命は決まってしまったともそのときは感じた。ウクライナがロシアに侵略されることを。 しかし、その思いは違った。 殺されないため…

ご挨拶

これまでTwitterで本を色々と紹介しておりましたが、このたび、書評をメインとする当サイトを新たに立ち上げることと致しました。 今後ともよろしくお願いいたします。