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フィリップ・コトラー著,恩蔵直人&大川修二訳「コトラーのマーケティング・コンセプト」(東洋経済新報社)

コトラーのマーケティング・コンセプト

不特定多数に向けての広告は多くの人にとって迷惑でしかないが、既にその製品の購入者、さらには愛好者である場合はむしろ好感を持って迎え入れられる。

迷惑にしか感じない街頭演説や選挙カーが存続しているのも支持者にとっては心地よいものとなる。

広告は顧客の獲得のためでは無く維持のために働く。

広告は本来、新たらしい顧客を生み出すためのものである。しかし、不特定多数を不快にさせる広告は新しい顧客を生まない。顧客が減るスピードを遅らせる効果があるだけである。迷惑にしか感じない広告を延々と流す存在、既存顧客を維持すれば存続できると考えている存在だけである。

新しい商品やサービスを広めたい、あるいは、自らの訴えを多くの人に伝えたいというとき、不特定多数に無差別に広げる手段はもはや有効ではなくなってきている。

情報は取捨選択され、自らの望む情報のみと接するようになっている。取捨選択に無理矢理加わろうとする行動は徹底的に嫌われる。「何で売れ行きが悪いんだ」と疑念を感じた場合、あるいは、「何で賛同を得られないのだ」と不満を感じた場合、自らが嫌われることをしてきたことを振り返ってみることが必要である。

本書は80のマーケティングコンセプトを詳細に解説しており、ビジネスの現場で直接活用できるアイデアを提供している。冒頭に述べた広告はそのうちの一つである。読者はこれらのアイデアを自身のビジネス戦略に取り入れることで、競争力を高めることができるはずだ。

かの著名なフィリップ・コトラーが理論的な側面だけでなく、実務的な視点からもマーケティングを考え、本書にまとめた。ゆえに。読者はコトラーの理論を理解しつつ、実際のビジネスシーンでの適用方法も学ぶことが可能となるはずである。