德薙零己の読書記録

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おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

東大作著『ウクライナ戦争をどう終わらせるか』

去年の2月24日、ロシアがウクライナへの侵略戦争を始めた。 以前からロシアへの怒りがはあったが、残念ながらウクライナの運命は決まってしまったともそのときは感じた。ウクライナがロシアに侵略されることを。 しかし、その思いは違った。

殺されないため、奪われないため、攫われないため、犯されないため、そして、生きるためにウクライナは抵抗した。大統領はキーウに残り、多くのウクライナ国民がロシアに立ち向かい、多くの国がウクライナへの支援を表明した。

そして、一つの現実が突きつけられることとなった。 プーチンウクライナ侵略をカレンダーで考えただろう。 だが、現在に生きる我々は、そして、後世に生きる人達は、この侵略戦争を年表で考えるだろう。 ウクライナは決して諦めない。奪われた領土は全て取り戻す。 ゆえに、この侵略戦争は長引く。

プーチンは、そしてロシアは、領土を奪われることを忌避する。それが侵略で手にした領土であろうとも、いかに正統性を有さない侵略であろうとも、意固地になって領土を手放そうとはしない。 ウクライナは領土を全て取り戻そうとしている。どこか一つでも正しい領土になった瞬間、ロシアは負けるのだ。

ロシアが停戦に妥協するとき、それはウクライナが領土の一部でも諦めることを意味する。 

ウクライナが抵抗を止めるとき、それは、ウクライナ全土からロシアが完全に駆逐されたことを意味する。

どちらもそう簡単には現実化しない。

ロシアの仕掛けたこの侵略戦争を終わらせる方法はあるのだろうか?

ウクライナ戦争をどう終わらせるか: 「和平調停」の限界と可能性 (岩波新書 新赤版 1961)