德薙零己の読書記録

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

マシュー・サイド著「多様性の科学:画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織」

経営学でよく取り上げられる有名な話がある。
あるオーケストラはメンバーが全員白人男性であった。オーディションでは白人男性だけが合格するのだ。審査する人は「優秀な奏者を採用しているだけだ」と言ったが、その考えはただ一つの対策で終焉を迎えた。
志望者はカーテンの向こうで演奏するのだ。

カーテンの向こうにいるのは誰かわからない。判断基準は楽器を奏でる能力だけである。その結果、性別も、肌の色も、年齢も関係ない新メンバーが採用されるようになった。
そのときはじめて、これまで優秀な奏者を採用できていなかったことを痛感した。

意識せぬ先入観を抱いたまま集団を画一化すると、間違いなくその集団は劣化する。良くても現状維持であるが、現状維持である間に他の集団に追い抜かれる。
そのことに気づくのは容易ではない。なぜなら多くの人は先入観を抱いていること自体に気づいていないから。

なお、私はこの本を、浦和レッズの岩尾選手が読んでいるという記事を目にしてから読んだ。中盤の底として浦和イレブンのコンダクターとなっている岩尾選手は、クラブの中でも年長者の部類に入る選手であり、後輩達の見本となる日々を過ごしている。それはピッチの上の話に限らず、練習においても、そして、私生活においても、若き後輩達の、さらにはユースやジュニアユースの選手達の手本たることが求められる役割であり、その役割を十分にこなしている。

ただただ頭が下がる思いである。

多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織