德薙零己の読書記録

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「嘘八百」シリーズ

広告というものは同時代に向けて作られ、同時代に向けて送り出されるものである。

そのため、後世の人間にとっては理解不能であったり、理解はできるもののそれはあくまでも歴史上の出来事しての理解であったりといった、同時代の人が体感できたような広告を観ての感想を抱くことが難しいことはよくある。

 

たとえば、こんな広告を理解できる人はそうはいないだろう。

男性の頭髪の悩みは今も昔も変わらないはずなのに、昭和9(1934)年の広告だと、ヒトラームッソリーニ(のように見える人物のイラスト)が広告に登場する。このようなセンスは到底現代人に理解できるものではないはずだ。

 

ちなみに、この広告はフケ取りの香水の広告であってシャンプーではない。

というより、この時代にシャンプーはない。

髪を洗うとすれば石鹸であるし、そもそも毎日髪を洗うわけでもない。

広告としては理解できるのだが、何となく胡散臭さも感じる。それが広告というものの現実であると言ってしまえばそれまでであるが、そもそもの衛生観念が現在と違うのだ。

観念が違うのは衛生観念だけではない。この時代には徴兵制があった一方で、中学に行くのはごく一部の人だけだった。今が女性差別の無い時代であるとは言わないが、かつての女性差別は現代の比ではなかった。

下品に過ぎるので本記事には掲載しないが、かつての空気は現代人には耐えられない空気であることも珍しくなかった。そうした過去の空気を現在の感覚で糾弾するのは簡単だが、過去とは書き換えることができないものである以上、歴史として過去を眺めることしか許されない。そして、過去はそういう空気だったのだと捉えるしかない。

 

広告を観るとその時代の空気が見えてくる。

現代人には理解できない空気を体験することもある。

天野祐吉氏の著した「嘘八百」シリーズの4冊は、明治、大正、昭和戦前の空気を伝えるシリーズとなっている。

嘘八百―広告ノ神髄トハ何ゾヤ? (文春文庫―ビジュアル版)

また、嘘八百!!―広告ノ神髄トハ何ゾヤ?〈明治篇〉 (文春文庫―ビジュアル版)

またまた、嘘八百!!!―広告ノ神髄トハ何ゾヤ?〈大正篇〉 (文春文庫―ビジュアル版)

嘘八百これでもか!!!!〈昭和戦前篇〉 (文春文庫―ビジュアル版)

 

こんなことを書いていたらシャンプーが残り少ないのに気づいたので、メモ代わりにこれも載せる。

ドクターズファーマシー BAKUシャンプープレミアム 500ml 1本