いささめに読書記録をひとしずく

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

ダニー・ドーリング著,遠藤真美訳「Slowdown:減速する素晴らしき世界」(東洋経済新報社)

団塊ジュニア氷河期世代は良い思いを全くしていない。我慢して厳しい競争を勝ち抜いて、さあ、これから学歴に見合った職について人生を謳歌しようというタイミングで就職先がなくなり、就職先を探しても無視され、一人の事務職の募集に百人以上の大卒が履歴書を手に殺到し、コンビニのアルバイト募集にも大卒が殺到し、ハローワークに出向いても職には全く出会うことなく時間だけが経過していく。

そのあとで救済があったならばまだいい。だが、その救済など何一つ無かった。30歳になり、40歳になり、50歳になってもなお何ら救済されることなく時間だけが経過し、年齢を重ねていった。

なぜこのような惨状に陥ったのか?

結論から言うと、それより上の世代である。下の世代の人口が増えるという前提で成立している経済が、人口再生産の不可能な出生率となったこと、そして、寿命が延びたことで、彼らが生きるために下の世代、特に直近の下の世代である団塊ジュニア氷河期世代に負担が押しつけられることとなった。働くことのできる場が無くても珍しくなく、働くことができても毎年増額させられている社会保険料のせいで手取りが少なくなっている。それでもこれ前であれば年齢を重ねれば今までの苦労をプラスマイナスゼロに持っていけるだけの恩恵を得ることができたが、その恩恵はやってこない。

このまま時間が経過したとき、高齢者のための負担が現役世代にとっては重すぎるという世論が生まれ、現役世代の負担軽減を名目として高齢者福祉が削減される。そのときの高齢者、それは、人生で全く良い思いをしてこなかった団塊ジュニア氷河期世代である。

この状況を好転させることはできないのか?

本書は現在進行形の経済の鈍化、人口増加の鈍化と縮小を述べている書籍である。その上で、今後の人類はどのようにして生きるべきかを述べている。そして本書は残酷な現実を告げている。日本が理想の社会である、と。日本の選んだ方法こそこれからの人類が構築すべき社会であるとし、もはや人口増加を前提とした社会は到来しないこと、経済発展を前提とした社会は到来しないことを述べている。その時代を迎えたときどのような社会を構築するか。その答えが日本だというのだ。

団塊ジュニア氷河期世代は今のところ大人しい。しかし、いつまでも我慢していられるほどお人好しではない。ましてや、日本国以外の犠牲世代は……