德薙零己の読書記録

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おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

ジャレド・ダイヤモンド著,倉骨彰訳「銃・病原菌・鉄 上下巻」(草思社)

21世紀の最初の10年間でもっとも売れたのが本書である。

なぜユーラシア大陸下文明が発達して他の地域に文明を伝播させることとなったのか、他の地域からユーラシア大陸に伝播することにならなかったのか、その答えとして本書の著者は、

  • 貯蔵に耐えうる高炭水化物の植物へのアクセス.
  • 貯蔵を可能にするのに十分乾燥した気候.
  • 家畜化するのに十分従順で、飼育下でも生き延びるのに十分な能力がある動物へのアクセス

の三点を挙げ、ユーラシア大陸に住む人の優れた知性などではなく、その土地の前提条件により可能となった発展の連鎖の結果であると主張している。

上記の三点の条件が揃うことで食料に余剰を生み、人々は栄養補給以外の活動に専念することができ、人口増加を支えることが可能となる。また、諸々の方面の専門家が生まれ、専門家と人口増加の組み合わせが社会的かつ技術的な革新の蓄積をもたらし、互いに積み重なって大きな社会を生み出す。大きな社会は支配階級とそれを支える官僚制を発展させ、これらが国民国家と帝国の機構につながるというのが本書の主張だ。

その上で、上記の三条件を満たす地域がユーラシアであるというのが本書の結論である。ユーラシアでは家畜化に適した植物や動物種がより多く入手可能であったため他の地域より優位に立つことができた。具体的には、ユーラシアには大麦、2種類の小麦、コメ、タンパク質を豊富に含む3種類の食用豆果、織物用の亜麻、そしてヤギ、ヒツジ、ウシをはじめとする45kg以上の大型動物が13種飼育されている。その結果がユーラシア大陸の文明発達の速度の理由であり、他の地域への伝播となった理由である。

ユーラシア大陸南北アメリカ、オーストラリア、アフリカへと伝播したのはまさに上記の要因である。その際に使用された武器、それこそが本書のタイトルである。