德薙零己の読書記録

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

岩田健太郎(著),石川雅之(イラスト)「ワインは毒か、薬か。」(朝日新聞出版)

禁酒した私がアルコールについて書き記すのも何だが、本書は私のように酒をやめた人間でも興味深く読むことのできる一冊である。また、本書のイラストにもやしもんでお馴染みの石川雅之氏が担当されていることもあり、もやしもんを読んできた方には取っつきやすい内容になっている。

参考までに本書の目次を記すと、以下の通りとなっている。

  • 川島なお美さんのがん死とワインの本当の関係
  • さくらももこさんの乳がんは喫煙が原因! ?
  • 「悪魔の味方」でワインを検証する理由
  • 醸造酒、蒸留酒、混成酒… わかりづらいお酒の定義
  • 「アルコール発酵」の偉人、微生物学が関係する理由
  • もやしもん』で人気の菌名はビールが語源!
  • 「おかしな主張だけど当時は正しかった」は科学の常
  • 黒木瞳さん「失楽園」で有名な1 級ワイン「格付け」の意外なきっかけ
  • 脚気」が感染症と疑われた理由
  • 君の名は。」にも出てきた口噛み酒の風習
  • 今は第7 次ワインブーム! 「経済成長」と「ワイン」の関係
  • 「007」ジェームズ・ボンド流「偽ソムリエ」の見分け方
  • ジェームズ・ボンドは酒浸りで手が震えていた!? 映画「007」と酒
  • ヘミングウェーも! ? 「お酒」と「うつ病」の因果関係
  • 神の雫』でも描かれた「メドック・マラソン
  • 微生物が「恩恵」にも「邪魔」にもなる理由
  • ワイン造りでの「有機」「無農薬」は健康によいか
  • 「健康のため」に有機ワインを飲むのは間違っている! ?
  • マリー・アントワネットのバストをかたどったグラス
  • 意外と違う赤ワインと白ワインの製造工程
  • 亜硫酸(二酸化硫黄)は健康に害を及ぼすか?
  • 天然のものを過度にありがたがる「天然ボケ」
  • ワインの味覚の特徴と食べ物の味覚
  • ワインを劣化させずに保管する方法とワインの適正温度
  • ワインの酸化と酸味について
  • 3種類あるワインの香り
  • ワインと料理のマリアージュ
  • ワイン造りと日本酒造りの違う点
  • 微生物の発酵で日本の食品は豊かに
  • 漬物には一長一短ある? 続・発酵食品について
  • 納豆と酢は本当に体にいいのか
  • 「甘、酸、塩、苦」の四味+「うまみ」という日本文化
  • メソポタミア文明のころ誕生した「チーズ」は7種類にわけられる
  • 長寿の秘訣は「ヨーグルト」!?
  • オリゼー(A. oryzae )と高峰譲吉
  • ビール、ウイスキー、ラム、テキーラの原料は?
  • 焼酎は二日酔いになりにくい?
  • どうして人は酔っぱらうのか。
  • タンニンとは何か? ポリフェノールとは何か?
  • 関連性の高いデータを優先させてベストを尽くす
  • EBMを駆使して、ワインと健康の関係を考える
  • 果物の摂取で血圧・血糖値が下がる!?
  • 砂糖入り飲料は体に悪いが砂糖入りのココアやチョコレートはいい?
  • 繊維に富んだ全粒粉を薦める地中海食
  • 酒は「百薬の長」か、「万病の元」か
  • アルコールを飲んだほうが健康になるって本当!?
  • 運動がアルコールのリスクを相殺する! ?
  • 薬であり、心に潤いを与え、疲労を回復させるワイン
  • レスベラトロールは健康を促進させるのか
  • ワインに健康面での利益がある理由
  • フレンチ・パラドックスは存在するか?
  • 二日酔いの重症度が一番大きいのはどのお酒!?
  • おわりに…

この目次からわかるとおり、本書は一つ一つのテーマを短くまとめており、先頭ページから最終ページまで目を通すという読み方だけでなく、ワインについて知りたいことの側面によって読みたいページを取捨選択できるようになっている。

そして、その全てのページがかなり興味深い内容となっており、読書としてでなく研究としてこの本を手に取った人の思いを満たす内容になっている。

たとえば、最後から2番目の「フレンチ・パラドックス」についてはとても興味深い内容になっている。本書のタイトルにもつながる内容であるが、フランス人は高脂肪かつ高カロリーな食事をしているのに、心臓病の発症率が低いという不思議な現象について、ワインに含まれるポリフェノール動脈硬化を予防する効果があるからだと考えられているが、この本ではその他にも地中海食や運動量などの要因も関係している可能性が示唆されている。

上段はあっさりとまとめたが実際はより詳細な記述になっており、目次に記した内容の一つ一つが詳しく解説されている。ワインを嗜む人だけでなく、ワインどころかアルコールそのものに興味の無い人にも、本書についてはより深い興味を持って接することができるであろう。

なお、本書を読むと、「天然ボケ」といいうフレーズで「農薬なんて許されないザマす!」「人工のものなど危険ザマす!」「天然がいちばん、自然がいちばんザマす!」と喚き叫ぶ光景が思い浮かぶようになるので注意。