2024年10月、石破茂自民党総裁、第102代内閣総理大臣に就任。
直後に実施された内閣支持率はおおむね50%前後と、先の岸田内閣支持率に比べれば高い数字であったが、これまでの新内閣発足時の支持率に比べれば低いものであった。
さて、こうした内閣支持率をはじめとする世論調査は、どのような方法で調査され、まとめられるのか?
基本的にはサンプル調査である。有権者の中から各種報道機関が任意に選んだ人達から聞き取りをし、あるいは書面で回答をしてもらい、その結果を集計した数字である。サンプル調査では実際の数字にならないではないかと思う人もいるかもしれないが、近似値という意味では統計学的に問題ない数字である。
本書はこの世論調査の手法を解説するのが一割、残る九割は本書執筆時の平成31(2019)年4月、すなわち、令和改元直前の時期における各政党の支持率とその前の選挙の投票傾向をまとめた書籍である。
たとえば、与党に投票した人の多い地域はどこか、特定の政党に投票した人の多い地域はどこか、衆院選での小選挙区に候補者を擁立することと比例代表における政党の得票率にどれだけの影響を与えるかを本書は記す。その上で、与党二党の得票率と議席数の関係、野党各党の得票率と議席数との関係を述べ、必ずしも与党が圧倒的な得票率となっているわけではないことを示している一方、野党もまた、与党に反発する世論を汲み取ることが出来ていないことを示している。
問題なのが、世論調査に登場する「支持政党無し」だ。与党の支持率が低くても野党の支持率が伸びないのはここにある。自民党は気にくわないが野党はもっと気にくわないという人はかなり多く、多くの世論調査ではこの数値が半数近くを占めることとなる。無論、支持政党がないことを投票によって示すことはできない。厳密に言うと、「支持政党なし」という名の政党が衆院選や参院選で候補者を立て、かつての政権政党である社会民主党の二倍以上の得票率を獲得したこともあったが、こんな詐欺はもう通用しない。このような詐欺でない限り、支持する政党が無いことを投票で示すことはできず、支持政党の無い状態で投票所に出向いて投票するならば、与野党どちらかの候補者に投票し、いずれかの政党に投票しなければならない。
つまり、ここで与党に反発する人の投票を促すことができれば野党は投票率を伸ばせる可能性があるのだが、2009年の政権交代選挙のときを除き、野党はそれに失敗している。失敗しているどころの騒ぎではない。やるべきことをやらず、やらなくてもいいことをしているのだ。
本書の著者は明らかに与党を批判し野党の得票率が増やすには如何にあるべきかという視点で本書を書き記している。それこそ、世論調査を主題とした書籍でありながら、現行の選挙制度に対する批判も容赦なく書き記している。しかし、本日のこの記事を執筆している現在、著者の嘆きを野党が受け止めてはいない。していることと言えば与党の批判ばかりであり、批判によって反与党の票を獲得することを目論んでいるだけである。批判ばかりではなく建設的な案も出しているという反論もあるだろうが、残念ながら有権者は野党のみなさんよりはるかに優秀なのだ。地動説を理解できている人に天動説の妄想は通じないのである。
本書の中にある世論調査の項目のなかにある有権者が重視していることに応え、実際に主張し行動しているのは、著者が期待している野党ではなく、著者が憎く感じている与党なのだ。