德薙零己の読書記録

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大和和紀著「源氏物語 あさきゆめみし 完全版 1」(講談社)

源氏物語 あさきゆめみし 完全版(1) (Kissコミックス)

大河ドラマ「光る君へ」で源氏物語が話題となっていることもあり、源氏物語に対する興味が集まったこともあって、本作「あさきゆめみし」に対する関心も高まってきている。異論もあるだろうが、2024年1月現在、もっともわかりやすい源氏物語の現代語訳である。それこそ、あさきゆめみしを先に読んでから源氏物語の原文に向かい合うと、あさきゆめみしの情景が源氏物語の原文と合致するほどだ。

そこで、本日からはあさきゆめみしの完全版全10巻を1巻ずつ紹介していく。

 

まず第1巻であるが、源氏物語は1000年前の人が読むことを前提として書き記された小説であり、紫式部は当然ながら同時代の人を読者として想定していたわけで、1000年後に生きる我々を読者に想定していたわけではない。その作品を現代語訳にするとなると、文章をそのまま現代語訳にすれば完了というわけではなく、1000年前の文化や風習を作品の中で解説していかなければならない。

源氏物語の現代語訳は第一巻のはじめにその説明をしなければならない宿命を持っているが、それを本作は見事に解決している。それがマンガの持つ威力であり、本作の素晴らしさである。

例えばこれが本書p.6~p.7であるが、まずはこれで圧倒される。源氏物語の現代語訳だけでなく、私が知りうる限りの歴史書の中に、この図以上にわかりやすい内裏の図はない。


マンガであるために、紫の上に会った瞬間の光源氏の心情も、藤壺との許されざる時間の描写も、より克明に描かれている。それも、衣服や調度品、建物の構造も完全なまでに再現された形で。

 


完全版の第1巻は、源氏物語

  • 第一帖 桐壺(きりつぼ)
  • 第二帖 帚木(ははきぎ)
  • 第三帖 空蝉(うつせみ)
  • 第四帖 夕顔(ゆうがお)
  • 第五帖 若紫(わかむらさき)
  • 第六帖 末摘花(すえつむはな)

が範囲である。源氏物語のストーリーの始まりであり、光源氏のプレイボーイとしての様相を描いていると同時に、光源氏の出生に由来する苦悩と光源氏の周囲の人達の困惑が広がっている。

これから先の光源氏がどのような運命を歩むか、源氏物語のストーリーを知る人にとっては伏線が張られていることに気づくであろう。