德薙零己の読書記録

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本村凌二監修「カラー版・世界の教養が身につくローマ史の愉しみ方」(宝島社新書)

カラー版 世界の教養が身につくローマ史の愉しみ方 (宝島社新書)

私事であるが、私の大学での専攻は古代ローマであり、学部生としては文学部史学科西洋史専攻西洋古代史ゼミが私の出身である。ゆえにバイアスが掛かっていることはやむをえないと言えるが、その点を差し引いても、西洋文化圏で高等教育を受けてきた人と話をすると、古代ローマに対する知識が一般教養となっていることに気づかされる。感覚で言うと、現代の日本人における故事の世界や三国志の時代に対する知識と言ったところか。

理論上は世界史の授業で古代ローマを学ぶことでそうした知識が身につくはずなのであるが、世界全史を教えるという前提であるため、どうしても世界史で学ぶことのできる古代ローマに対する知識となると受験に対する知識の詰め込みということになってしまい、充足するとは言い切れない。

かといって、塩野七生氏の「ローマ人の物語」を全巻読むとなると時間を要することとなる。ローマ人の物語を全巻読めば古代ローマに対する知識として申し分ない結果を得ることとなるが、あの厚さの書籍が全15巻であるから、1冊につき2日としても読了まで1ヶ月を要する。

そこで本書の出番である。さすがにローマ人の物語に比べれば分量は少ないが、その代わりに2時間で、ローマの建国神話から東ローマ帝国滅亡まで野歴史の概要を学ぶことができる。第一次ポエニ戦争ガリア戦記に対する記載の乏しさや、古代ローマの社会生活に対する描写の乏しさといったマイナス点はあるものの、ローマ全史をコンパクトにまとめている。それこそ、一般教養としての古代ローマの歴史を2時間で学べるほどだ。

求められる知識としての古代ローマ史を手軽に学ぶのに、現時点では最高の一冊と言えるであろう。