来年の大河ドラマ「光る君へ」の影響で、源氏物語の時代に関する書籍が数多く書店に並ぶようになっている。本書もそうした書籍のうちの一つであるが、本書は源氏物語そのものの解説書ではなく、源氏物語の時代の皇族や貴族達の政務と日常を描いた書籍である。特に、それまで教科書で描かれてきた律令制の明瞭な制度が崩壊した上での皇族や貴族達の日常を本書は描きだしている。
そこにあるのは過酷な現実である。激務の天皇、上皇となった後の暮らし、皇女たちが受け入れなければならなかった運命、そしてやってくることとなる資産問題にも目を向けている。
また、貴族達の日常も必ずしも現代人の考えるような豪奢で優雅なものではなく激務で野蛮なものであること、貴族と庶民との間はそこまで断絶したものではなかったことなど、本書はそれまでのイメージを否定する内容に満ちている。
本書は源氏物語の時代風景をわかりやすく解説しており、今から1000年前のリアルを知ることで、来年の大河ドラマと、源氏物語の時代がよりいっそう楽しめるようになる一冊である。