本書の角書きである「大人の学参」。これは虚構ではない。実際に大学受験で出題された問題を解説する形式で日本国の歴史を解説しているのが本書である。
たとえばこのような問題である。
次の(1)~(3)の文章を読んで、下記の設問A・Bに答えなさい。
(1)1235年、隠岐に流されていた後鳥羽上皇の帰京を望む声が朝廷で高まったことをうけ、当時の朝廷を指導していた九条道家は鎌倉幕府に後鳥羽上皇の帰京を提案したが、幕府を拒否した。
(2)後嵯峨上皇は、後深草上皇と亀山天皇のどちらが次に院政を行うか決めなかった。そのため、後嵯峨上皇の没後、天皇家は持明院統と大覚寺統に分かれた。
(3)持明院統と大覚寺統からはしばしば鎌倉に使者が派遣され、その様子は「競馬のごとし」と言われた。
【設問A】
後鳥羽上皇が隠岐に流される原因となった事件について、その事件がその後の朝廷と幕府の関係に与えた影響にも触れつつ、2行以内で説明しなさい。【設問B】
持明院統と大覚寺統の双方から鎌倉に使者が派遣されたのはなぜか。系図を参考に朝廷の側の事情、およびAの事件以後の朝廷と幕府の関係に留意して、3行以内で述べなさい。(東京大学 2019年)
以外と簡単に解けそうな気がする。ただし、承久の乱から南北朝の争乱に至るまでの歴史を頭の中に入れていればの話であるが。
理論上、高校の日本史の教科書で学べば答えは出てくるはずである。しかし、教科書というものは広く浅く学ぶこととなる宿命を持った学習教材である。
なぜか?
学ばなければならないことがあまりにも多く、学ぶべきことを全て教科書に詰め込むとなると個々の学習を浅くしなければならない。その結果、学ぶことは暗記することとなり、複数の選択肢から答えを選ぶテクニックに走ることとなる。上記の入試問題でも「承久の乱」という語を解答用紙に書くところまでは教科書だけの学習で可能となるが、上述の設問に耐えうる答えとはならない。
本書は、日本史という枠に絞った、より深く学ぶための入口となる一冊である。出来事の順番や歴史上の人物の名を覚えるのではなく、なぜそのような出来事が起こったのか、その人物がどのような考えでどのように行動したのかを学ぶための入口となる一冊である。
もう受験シーズンに突入してしまっているが、これからチャレンジする大学の日本史の入試問題が論述問題であるという受験生の方は、本書に目を通してこれから挑むこととなる日本史の試験問題の勝者となることを意図してはいかがであろうか?