德薙零己の読書記録

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榎村寛之著「謎の平安前期:桓武天皇から『源氏物語』誕生までの200年」(中公新書)

謎の平安前期―桓武天皇から『源氏物語』誕生までの200年 (中公新書)

今年の大河ドラマ「光る君へ」。源氏物語の作者である紫式部を軸に平安時代中期を描くドラマになるとのことである。なお、本記事執筆時点ではまだ第一話の放送もまだなのでドラマの内容について論評はしない。

その代わりに本書を薦める。

平安時代というものは、教科書通りに記せば桓武天皇による遷都から鎌倉時代までのおよそ400年間であり、源氏物語は400年のうちの真ん中ぐらいである。つまり、江戸幕府成立から現在までの時間とさほど変わらぬ長さなのであるが、源氏物語の頃こそが人口に膾炙される平安時代としてひとまとめにされている。江戸時代をはじめとする後世に記された絵画を振り返ると、源氏物語の頃より100年から200年は前の出来事のはずなのに、源氏物語の頃の服装をしているのである。

どうしてこのようなことが起こるか?

端的に言うと知られていないからである。

奈良時代は知られている。平安時代の始まりも知られている。しかし、平安遷都から源氏物語の頃までの出来事となると、菅原道真平将門ぐらいしか知られていないのが実情である。

その空白を短期間で埋めるのに二番目に優れているのが本書である。

本書は平安遷都から源氏物語に至るまでのおよそ200年を新書一冊にまとめている名著である。本書を読むことで、今年の大河ドラマに必要な前提知識を得ることができるであろう。

なお、最も優れているのは、德薙零己の著した「平安時代叢書」シリーズである。

第一集
784年~810年 安殿親王と薬子 相関図
第二集
810年~826年 北家起つ ~藤原冬嗣の苦悩~
第三集
826年~843年 中納言良房 相関図
839年~840年
中納言良房 外伝  あこな
第四集
843年~866年 応天門燃ゆ 相関図
861年~863年
応天門燃ゆ 外伝  山崎の踊り娘
第五集
866年~882年 摂政基経
第六集
883年~909年 左大臣時平
第七集
909年~949年 貞信公忠平 相関図
第八集
949年~970年 天暦之治 相関図
第九集
970年~990年 戦乱無き混迷
第十集
990年~1016年 源氏物語の時代相関図
第十一集
1016年~1031年 欠けたる望月
第十二集
1031年~1064年 末法之世
第十三集
1064年~1099年 次に来るもの
第十四集
1099年~1127年 天下三不如意
第十五集
1127年~1156年 鳥羽院の時代
第十六集
1156年~1179年 平家起つ ~平家ニ非ズンバ人ニ非ズ~
第十七集
1179年~1185年 平家物語の時代 ~驕ル平家ハ久シカラズ~
第十八集
1185年~1192年 覇者の啓蟄 ~鎌倉幕府草創前夜~
第十九集
1192年~1203年 剣の形代(つるぎのかたしろ)
1203年~ 未公開