德薙零己の読書記録

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

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ヘイミシュ・マクレイ著,遠藤真美訳「2050年の世界:見えない未来の考え方」(日本経済新聞出版)

2050年の世界 見えない未来の考え方 (日本経済新聞出版)

本書は、現時点のまま世界が進むとして、2050年はどのような世界になっているのかをまとめた書籍である。

結論から言うと、想像するほどの絶望ではない。しかし、少なくとも日本国だけで考えると、失われた30年をなかったことにし、かつての栄光を取り戻せるような未来は到来しない。それも、その栄光を忘れることのできないでいる人達が足枷となって、栄光を取り戻す未来はやってこない。現時点で世界最大規模の高齢化社会がやってくる。多くの高齢者を少ない勤労世代で支えねばならず、その負担に社会にリソースの多くが割かれる。その結果として生まれてくる子供が減る。

厄介なのは、この問題は日本だけの問題ではないというところだ。この問題に日本国は世界で最初に向かい合わなければならない。ゆえに、解消する方法を見つけ出し、実践し、結果を出すことに成功すれば世界のトップランナーになることができるが、その見込みは乏しい。また、仮に日本が少子高齢化社会に対する問題を解決することに成功したとしてもさらなる問題が存在する。

それは、日本の少子高齢化社会問題はまだマシだという点。韓国の出生率が1.0を下回ったとか、一人っ子政策のために将来の高齢者を誰が支えるのかという問題とかがあり、現在の日本の少子高齢化問題よりも甚だしい地獄が到来するのは目に見えてしまっている。そのとき、前段で記した解決が通用しないことは十分に考えられる。

もっとも、以上のことは全て、現時点で判明している未来である。今から5年前にCOVID-19を予想した人も、ロシアのウクライナ侵略を予想した人もいない。疫病の流行や、ロシアのクリミア侵略のさらなる悪化を予想した人はいるかもしれないが、それがCOVID-19や宇露戦争にまで発達することを予想した人はいない。また、東日本大震災級の自然災害を予想することはできないし、昨年のような異常なまでの高温を予想するのは不可能とは言えないにせよ困難である。

そうした不明点がどこまで2050年の社会を現在よりも好転させるものとなっているか、今は誰もわからない。