德薙零己の読書記録

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志村史夫著「古代日本の超技術・改訂新版」(講談社ブルーバックス)

歴史ある木造建築は釘を全く使わないで建設されたイメージがあるが、法隆寺は釘を使っている。

ただし、普通の釘ではない。

飛鳥時代に鋳造されてから1300年以上経ってもサビ一つ生じていない釘で、解体修理で引き抜くときに釘はゆがむが、ゆがみを直せばまた使える釘である。実際、修理後の釘は再利用される。

さて、本書は、現代のハイテクを知り尽くした半導体研究者である著者が、古代日本が誇る、自然を活かしきった匠の技のすべてを自ら体験・実験して読み解いた内容を解説した一冊である。

具体的には、冒頭で述べた法隆寺の釘の他に、五重塔がなぜ倒れないのか、驚異の湿度調整能力で家屋を守る古代瓦、名刀「正宗」に隠された、半導体顔負けの多層複合構造など、日本が誇る古代の工匠たちの「驚異の技」の謎を解説している。

歴史研究者が古代日本を語るとき、古代日本の政治的、社会的側面を描く一方、技術的側面を描くことは少ない。驚異的技術があったことを記すことがあっても、その記載は詳細ではない。本書はその詳細を書き記している希有な一冊である。

なお、本書は本年12月にさらなる新装改訂版が刊行されている。研究の世界は日進月歩。より最新の研究成果を知るのであれば、本年12月の新装改訂版をお勧めする。