現時点で手にできる情報から未来をパーセンテージで予測するため解説の書であり、その解説は自分の考えに固執する人が陥る罠への警鐘でもある。
「自分がAさんならこの決断をするか?」という考えは危険である。
なぜなら、あなたはAさんではない。
現時点でAさんが置かれている状況は把握できても、Aさんの判断はAさんにしかできず、Aさんの判断そのものが実行される直前まで決まらない。本人も決めていない決断を他者は決められない。
「それが合理的な判断である」というのも怪しい。なぜなら、当事者にとっての合理的な判断と、予測者にとっての合理的な判断とは一致しないものだから。
書中ではBrexitについて記されていたが、おそらく、その後に起こったトランプ政権誕生について同じ判断となっただろう。「予測は外れた」と。
予想が外れたとき、「自分は正しかった。こうなってしまう方がおかしい」と考える人は、絶望的に未来予測に、すなわち、今後の行動を託すのに向いていない。予測が外れることはある。重要なのは予測の外れたとき、なぜ自分の予測が外れたのかを冷静に見つめ直すことである。
本書は昨日紹介した、アンジェラ・ダックワース著「GRIT:やり抜く力」を読んだ方々にもお勧めしたい。「GRIT:やり抜く力」の著者の知られざる努力の源泉を知ることにもなるであろう。