平治の乱は何ともとらえどころのない事件である。
平安時代叢書で平治の乱を書くにあたって、私はとにかく歴史的出来事を時系列に則って書き記すことに徹した。そうすることでいつ平治の乱が起こり、平治の乱がどのように推移し、平治の乱がどのような結末を迎えたかを書き記したつもりである。
しかし、「なぜ平治の乱が起こったのか」という根源的な問いはあまり深く踏み込めなかったという思いがある。それは私だけでなく、平治の乱の前後の歴史を描こうとする全ての人に突きつけられた難問であり、私を含む多くの人は史実を列挙することで、「なぜ」を回避し、あるいは、「なぜ」を回避しないもののぼやかす記載とする。私も平安時代叢書では後白河上皇を黒幕とする記載をしたが、そこまで明瞭には描けなかった。
その難問を本書は正面から向かい合った。そして、誰もが想像だにしなかった答えを示した。その答えをここに示すのはネタバレになるので記さないが誰もが驚愕する答えである。
ヒントを記す。
その答えは後白河上皇でも、平清盛でも、源義朝でも、藤原信頼でもない。
誰もが想像しなかった答えを本著の著者は明示する。それも数十年後に、平治の乱当時は黒幕を遠くから眺めるうちの一人であった源頼朝が語った一言の意味を詳しく調べたことで、想像だにせぬ答えが登場する。
本書を読んでその答えを目にして欲しい。驚愕するはずである。