本書は1930年代のケインズが直面した経済的困難に対して、問題の本質を理論的に解明し、具体的で現実的な政策手段を提案した内容がまとめた一冊である、
ケインズは、新聞や雑誌への寄稿、あるいは講演という形で、より広範な市民に向けて、自身の考えを噛み砕いて積極的に提示し続けた。その中でケインズが取り組んだ問題は、デフレ大不況、財政問題、国際通貨問題、貿易問題など、現在に生きる我々が直面している問題とも重なっている。
具体的には、本書においてケインズは以下のような主張を展開している。
- 雇用の創出効果は広範に及び、十分に大きい
- 財政への悪影響は、一般に考えられるよりも小さい
- 正常水準からの物価上昇は景気回復に必ず伴うものであり、インフレではない
- 長期金利の上昇を招いて民間投資を締め出したり、国債の借換コストを上昇させたりすると大打撃を招く
これらの主張は今日の脱デフレ政策と通底するものであり、それらを展開した「失業の経済分析」「世界恐慌と脱却の方途」「ルーズベルト大統領への公開書簡」「財政危機と国債発行」「自由貿易に関するノート」「国家的自給」「人口減少の経済的帰結」など、1930年代のケインズの重要論稿が本書に収録されているのが本書である。