德薙零己の読書記録

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ヴェルナー・ゾンバルト著,金森誠也訳「戦争と資本主義」(講談社学術文庫)

戦争と資本主義という書名であるが、死の商人について扱った書籍ではない。戦争が資本主義の発展にどのように影響を与えたかを詳細に説明している書籍である。

ゾンバルトは本書において、軍需による財政拡大が資本形成を促進し、常備軍の増強が農業、流通、貿易に影響を与え、武器の近代化が製鉄や機械製作、造船、繊維産業の成長をもたらした経緯を分析している。また、これはマックス・ヴェーバーの組織論とも関連するところであるが、軍隊の指導と行動の分業化が大量生産した画一的な人間像についても触れている。

「戦争は資本主義の組織をただ破壊し、資本主義の発展をただ阻んだばかりではない。それと同様に戦争は資本主義の発展を促進した。いやそればかりか、戦争はその発展をはじめて可能にした。それというのも、すべての資本主義が結びついている最も重要な条件が、戦争によってはじめて充足されねばならなかったからである」というのが本書の主張だ。

近代軍隊の発生から18世紀末にかけて戦争が育んだ資本主義経済の実像を論究して

この本は豊富な資料と文献を用いて、近代軍隊の発生から18世紀末にかけて戦争が育んだ資本主義経済の実像を論究している。前述のマックス・ヴェーバーと関連づけて読むとより深く理解することができるだろう。