德薙零己の読書記録

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

ダン・アッカーマン著,小林啓倫訳「テトリス・エフェクト:世界を惑わせたゲーム」(白揚社)

ロシア革命からソビエト崩壊までの過程において何か一つでも生み出したモノがあるだろうか?

その答えは、「一つだけならある」。

テトリスだ。

75年間の共産主義の歴史で唯一生み出したテトリス。このテトリスは単純であるがやみつきになるゲームであるために西側の多くの企業がこのゲームを買いに来た。普通ならば簡単に買うことができたであろうが、取引相手はあのソビエトだ。簡単には行かない。

本書は、伝説的なゲーム「テトリス」がどのように誕生し、繰り広げられたライセンス争奪戦、そしてゲームボーイでの大ヒットまでを詳しく描いている。テトリスは、当時すでに世界中の人々に途方もない影響を与えていたゲームであり、ロシア革命以後はじめて誕生した世界的ヒット商品についてはソ連政府の管理下に置かれることになった。その結果が、映画を上回る展開を見せる驚きの実話の連発である。

西側でテトリスの魅力を理解したゲーム企業のエージェントが社会主義官僚と激しい駆け引きを繰り広げ、さながらスパイ小説のような権謀や策略をめぐらした結果が本書にある。

時代が時代なら、この流れがアドベンチャーゲームになっていたであろう。