德薙零己の読書記録

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

ポール・オフィット著,ナカイ・サヤカ訳「反ワクチン運動の真実:死に至る選択」(地人書館)

2014年に刊行された "Deadly Choices : How the Anti-Vaccine Movement Threatens Us All" が地人書館より邦訳されて刊行されたのが2018年。それから1年を経て、人類は地獄を見た。

本書は反ワクチン運動がもたらす被害を示し、ワクチンを忌避することによって失われる命の多さを指し示すこの一冊は、読む人を選択する一冊であると言える。

正しい知識を持つ人はこの本を読んでワクチンを接種する自分の正しさを確信するし、誤った考えである人はそもそもこの本を手にしないであろうから。

ワクチンを忌避することの感情の心底には、強制されることへの忌避感がある。ワクチンによってどれだけ命を救い出すことができるかを示しても、ワクチンがもたらす害悪を見つけ出し、無ければ生みだし、生み出すこともできなければ金儲けという理屈で、ワクチンを強制することを徹底的に攻撃する。

ワクチンは儲かるものではない。
製薬会社も、医療関係者も、ワクチンでは儲からない。
それでもワクチンを続けるのは、命を救い出すことの使命感と責任感があるから。

人類は体験した。
以前から体験していたことを、改めて体験した。