このような幼少期を過ごしてきた人は多いのではないだろうか?
- 本を読むのは仲間外れ
- 難しい言葉を使うと仲間外れ
- 勉強ができるのは仲間外れ
- 暴力から逃げたら仲間外れ
そして、仲間外れのターゲットになったら待っているのは容赦ない暴力の日々。
仲間外れになりたくなければ、すなわち、暴力のターゲットになりたくなければ、誰かを暴力のターゲットとしなければならない日々。暴力のターゲットがあるときだけ一致団結し、ターゲットが無くなったら新たなターゲットを作りだして無限に暴力を続ける日々。
こういう環境に身を置かなければならなくなったら、どうやったら自らの学力を上げることができるというのか。
学歴も手にできず、進路も狭まり、就業先は限られ、就業そのものも不可能となるような幼少期を迎えて果たして幸福な人生を歩めるだろうか?
貧困を迎えなくて済む人生を歩めるだろうか?
ダレン・マクガーヴェイ氏が述べているのは、スコットランドの貧しい家庭に生まれ暴力に満ちた社会に育った体験と、そうした環境に生きるしかなくなっている人達の現実である。しかし、この現実はスコットランドの、あるいはイギリスの特有のことではない。
本書の副題は「イギリス最下層の怒り」であるが、世界中のどこにでも目にする、無論、日本でも目にする環境の現実である。
貧しさを社会問題として訴える人は多い。解決すべき問題であると考える人も多い。だが、そうした人のほとんどは、本書の書名である「ポバティー・サファリ」に終わっている。
貧困(ポバティー)をサファリ(見物旅行)する、それも、自分は貧困から離れた安全な場所で眺めて、一瞬だけ心を痛めて、少ししたら別の話題に頭を切り換える。切り替えないにしても、貧困を再生産する環境に全く手を付けることなく、議論はしても、解決の手を差し伸べることもない。
その間にも、貧困を再生産する環境は継続し、その環境に苦しめられ、未来が奪われている人はたくさんいる。
現在進行形で。