反省とは何のためにするのか?
普通は、何かしらの失敗があり、あるいは何かしらの問題があり、その失敗や問題を二度と起こさせないために反省するのではないか、そして、失敗を咎める側、問題を咎める側も、再発を防ぐために反省させるのではないか。
ところが、本著ではその考えを真っ向から否定する。
失敗したときに反省させると、同じ失敗を繰り返すようになる。同じ失敗を繰り返させないためには、失敗したときに反省させないことが重要である。
これが研究成果として示されたというのだ。著者自身も信じられなかった。二度と起こさせないための反省が、むしろ再発を誘発しているなど信じられなかったからだ。もともとは反省することで如何に再発を防ぐのかを研究していたはずなのに、反省をすればするほど失敗を繰り返すという結果が出てしまっているのだから信じられないのもやむをえない。しかし、結果が出てしまっている以上、「反省すればするほど失敗を繰り返す」は結論とするしかない。
本書はスタンフォード大学のケリー・マクゴニガル教授の著した自己啓発書である。
マクゴニガル教授は意思力(Willpower)を重要視し、本書はいかにして自己の意思力を高めるかに主眼を置いた論述がなされている。前述の「反省」についても、意思力向上のための一視点である。
本書の内容を要約すると、
- 意志力とは、注意力や感情、欲望をコントロールする能力であり、意志力の能力を磨くことで「誘惑」「依存症」「やる気が出ない」などの悩みから解放される。
- 意志力を磨くメリットとしては、
- 無駄な出費を抑えて貯金することができる
- 栄養のバランスを考えた食事を心がけることで健康体質にすることができる
- 筋トレを習慣にしてカッコいい体を手に入れることができる
- 意志力を磨く方法としては、
- 選択した瞬間を振り返る
- 呼吸を遅らせる
- 睡眠時間を確保する
- 屋外の自然に触れる
- 望む力をつくりだす
- 「なぜ」を考えれば姿勢が変わる
- 「明日も同じ行動をする」と考える
- 失敗した自分を許す
- 10分待ってみる
- 背水の陣で挑む
となる。前述の「反省」は「失敗した自分を許す」の中の一節である。
この本は、理論だけでなく実践的な方法も提供しており、読者が自分自身の行動や意志力について深く理解し、それらを改善するための具体的な手段を提供している一冊である。