この本の章立てを並べただけでも興味が湧いてこないだろうか?
- 汚職とは何だろう?
- 汚職がいちばんひどいのはどこだろう?
- 汚職はどんな影響をもたらすの?
- だれが汚職をするのだろうか?
- 汚職の文化的基盤とは?
- 政治制度が汚職に与える影響は?
- 国はどうやって高汚職から低汚職に移行するのだろうか?
- 汚職を減らすには何ができるだろうか?
ただし、章立てを見て沸き立つ興味と裏腹に、本文からは残酷な現実が思い知らされる。
「こうすれば汚職は無くなる」と考えて実行することはたいてい失敗しているという現実、そして、汚職を糾弾し、汚職にまみれた権力を倒したあとに待っているのも清廉潔白ではないという現実だ。
もっとも、実感と一致することも記されている。独裁制より民主制のほうが汚職が少なく、貧しい国より豊かな国のほうが汚職が少ない。ならば、民主制にして豊かな国にすれば汚職は無くなるのか? それは本書を読んでいただきたい。その答えはまさに載っている。
翻訳書に必ず存在する訳者あとがきは、日本語に翻訳された本を読んだ、日本語読者だけの文章だ。そして、本書における訳者あとがきは、翻訳された山形浩生氏の痛烈な皮肉が記されている。
原著を読んだ方であっても、この訳者あとがきのためだけに邦訳版を読むことをお薦めする。