德薙零己の読書記録

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ミッチ・プリンスタイン著「POPULAR 「人気」の法則: 人を惹きつける謎の力」(三笠書房)

「何でこの人がモテるの?」

自分がモテない部類に入る人間であり、上記の感情を抱くことはあっても抱かれたことはない。だからこそ、本書にある人気の、いや、モテのための法則を描き出しているのが本書である。

その上で記す。

本書に従うならば、私はもう手遅れだ。

何しろ幼少期に大部分が決まってしまい、その後でひっくり返すのが困難だというのが本書の主張なのだ。モテ要素は幼少期にもう決まってしまっており、学校生活を過ごす年齢にはもう固定してしまっている。この時期に被虐者であったならば年齢を重ねても被虐者の地位から抜け出すことはできないと著者は訴える。だからこそ、自分を受け入れてもらおうと周囲に自分を溶け込ませようとするのが著者の主張である。

人気を得るのは複雑な要素の絡み合いである。著者はその複雑さを広範な研究を進めることで、個人の生活と全体的な幸福に与える影響として検証している。上記に記したのがその解だ。

人気を単に表面的なものであり、また、無常な現象として片付けるのではなく、その心理的な根源や社会的な意味合いも存在すると本書は説いている。特に着目すべきは、人気の根幹がステータスではなく好感度にあるという点だ。その人の社会的地位を高めれば無条件で人気が上がるというわけではなく、周囲に人が増えたとしてもそれは個人的魅力の上昇ではなくステータスのおこぼれに預かることが目的であると著者は主張している。この点について周囲を振り返ると、よくある話として、それまで毎年のように大量の年賀状を受け取っていたのに定年退職と同時に年賀状がピタリと来なくなるというのが挙げられる。これなどは、その人と接したいという魅力があったからやりとりが存在していたのではなく、その人のステータスが目的でやりとりを続けていただけの話である。ステータスを失ったらその人個人的な魅力しか残らず、現実が待ち構えることとなるのは身近な話だ。

著者は、自尊心、社会的スキル、感情的知性といった主要な心理学的原則を強調し、読者がより健全な人間関係を築き、積極的かつ本格的な方法で自らの好感度を高めることができるよう力を与えている。実践的なエクササイズや戦略を盛り込むことで、本書の価値をさらに高め、読者が日常生活で実践できる可能性を生み出す具体的なツールを提供している。もっとも、それができるようになるかは難しい。前述のように幼少期に多くが決まる。その後でひっくり返すのは困難である。

それでも何もしないよりはマシである。人気をいかにして獲得するか、いかにモテるようになるかについて、上限は無いと同時に下限も無い。何もしなければただたださらに墜ちて行くのみである。本書に従えば……