德薙零己の読書記録

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

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ポール・R・ドーアティ&H・ジェームズ・ウィルソン(著),保科学世(監),小林啓倫(訳)「HUMAN + MACHINE 人間+マシン:AI時代の8つの融合スキル」(東洋経済新報社)

まず、前もって記しておくことがある。

本書は2018年3月にハーバード・ビジネス・プレスから出版され、同年11月に邦訳版が刊行された書籍である。

ChatGPT をはじめとする Open AI が話題になったのは本書刊行から5年以上経た今年である。しかし、本書は2018年時点で既に、現在の我々が Open AI が社会にもたらす影響として議論している内容を本書は既に分析し、考察し、提言をしているのである。

本書はまず、職場における人間と人工知能(AI)の進化する関係を探求している。AIが産業を変革し、伝統的な仕事の役割を破壊する時代において、著者らは、個人、組織、社会がどのようにAIの力を活用し、イノベーションを促進し、より良い仕事の未来を創造できるかについて貴重な洞察を提供しているのが本書である。

AIとその仕事への影響の様々な側面をナビゲートし、人間のスキルとAIの能力を組み合わせた協調的アプローチの必要性を強調しているのが本書であり

  • AIを理解する
  • 仕事を再構築する
  • AIがもたらす未来で成功する

という3つの異なるテーマを掘り下げている。

そして、それぞれのテーマにおいて、実際の事例、ケーススタディ、専門家の意見を織り交ぜながら、AIの可能性、課題、各業界への影響についてバランスの取れた見解を提示している。


著者達は、拡張知能の概念を紹介し、人間と機械がどのように協力して生産性と意思決定を強化できるかを強調している。各分野で成功したコラボレーションを探ることで、著者らはAIがいかに人間のスキルを補完し、成果の向上や新たな機会の開拓につながるかを説明している。AIを脅威ではなくパートナーとして受け入れることの重要性を強調し、統合を成功させるにはAIの能力と限界を深く理解する必要があることを強調している。

本書は、AIがどのように仕事のプロセス、職務役割、組織構造を再構築しつつあるかを掘り下げている。二人の著者は、AIが人間に取って代わるのではなく、ルーチンワークや反復作業を自動化することで、個人がより複雑で創造的な取り組みに集中できる時間を確保すると主張している。彼らは、労働力を再教育し、職務の役割を再構築し、継続的な学習とコラボレーションを受け入れる文化を育成することによって、組織がどのように適応する必要があるかを論じている。

著者らは、偏見、プライバシー、雇用の転換など、AIの倫理的影響について述べている。公平性を確保し、潜在的なリスクを軽減するために、透明性、説明責任、責任あるAIの実践の必要性を強調している。二人の著者は、AIが雇用、所得格差、社会構造に与える影響など、より広範な社会的影響を考慮するよう読者に促している。政策立案者、ビジネスリーダー、そして個人に対し、包括的かつ倫理的なAI戦略を策定することで、仕事の未来を積極的に形作るよう促している。

そして著者らは、AIを活用した世界で個人や組織が成功するための実用的なアドバイスを提供している。共感性、創造性、批判的思考、適応性など、人間として不可欠なスキルを身につけることの重要性を強調している。また、二人の著者は、技術の進歩に直面した際の妥当性を確保するために、個人レベルでも組織レベルでも、継続的な学習とスキルアップの必要性を強調している。

本書は、AIが仕事と雇用の未来に与える影響を包括的に探求した、非常に有益で示唆に富む本である。AIの統合に伴う潜在的な利益、課題、倫理的考察を巧みに取り上げている。人間と機械のコラボレーションの重要性を強調することで、著者らは個人と組織がAI時代の進化する仕事の風景をナビゲートするためのロードマップを提供する。本書は、AIの変革の可能性を理解し、その力をポジティブな結果に活かす方法を模索する人にとって必読の書である。