德薙零己の読書記録

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

長束恭行著「東欧サッカークロニクル」(カンゼン)

2018年W杯決勝に進出したクロアチアをはじめとする東欧諸国に加え、アイスランドフィンランド、そしてキプロスのサッカー事情を記した一冊。
この本を読むと、サッカーという視点から眺めることでのヨーロッパの現状を目の当たりにする。

一言でヨーロッパとまとめても、広い。様々な国が、様々な民族が、そして、様々な紛争の記憶と現実がある。
サッカーという日常はこうした現実の上に成り立っている、と、知識としては知っていたつもりのことを、実際にはあまりにも知らないでいたのだと、これでもかと痛感させられる。

その中には今まさに繰り広げられているロシアのウクライナ侵略の余波で着目を集めている沿ドニエストルもある。サッカーを観る、ただそのためだけにいかにしてこの“国家”に渡るかという苦労話も存在する。裏を返せば、サッカーを観に行くという当たり前のこともできない、あるいは、できなくもないが極めて困難であるという現実が立ちふさがっている地域が存在しているということである。

本書刊行は2018年である。一部地域を除けば本書刊行時より状況は好転している。だが、その一部地域は……