德薙零己の読書記録

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おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

中川右介「世界を動かした「偽書」の歴史」(ベストセラーズ)

2023年5月3日、モスクワで奇妙な出来事が起こった。

何者かがクレムリンに爆撃を加えようとしたというのだ。

駐日ロシア大使館の発表によると

5月3日夜、キエフ政権はクレムリンロシア連邦大統領官邸に無人機による攻撃を試みた。

2機の無人機はクレムリンを標的としていた。軍および特殊機関がレーダー戦闘システムを使って適時に行動した結果、無人機を無力化することができた。

だという。

 

ただ、ロシアの発表を文字通り捉える人はどれだけいるだろうか?

ウクライナ国境からモスクワまでは最短でも750km、それだけの長距離航行ができる無人機があるだろうか? 本記事執筆時点では、軍事用の無人機の最長航行距離ですら150kmである。しかもその距離は理論上の数値であり現実化されたという話は聞かない。

軍事用だから秘匿しており、実際には公表されている数値の5倍の航行距離を稼ぐことのできる無人機が存在していてもおかしくない。ただ、そうなると、ロシアは国境から延々と滑空する未確認飛行物体を何ら対処しなかったこととなる。平和国家ですらそのようなことは許されない。ましてやロシアは戦争をしている国だ。ロシアでそのような防空はあり得ない。

ならば、何者かがクレムリンの近くに無人機を運び込んで飛ばし、クレムリンを爆撃しようとしたこととなる。ピンポイントなテロでいうと、日本国でも昨年の安倍晋三元首相殺害事件や今年の岸田文雄首相殺害未遂といったテロがあった以上、絶対に起こらないとは言い切れない。プーチンを殺害することで大きなメリットを受ける人間は、安倍元首相や岸田首相の比ではない。しかし、プーチンは侵略をするような愚か者だが自分が殺害のターゲットになっていることすら理解できないほどの愚か者ではない。ロシアは戦争をしている国だ。攻撃する側がされる側に変わることは戦争において珍しいことではない。そのプーチン相手にテロを仕掛けるのは極めて難しい。

さらに問題なのが、爆撃機突入の様子が撮影されていたという点である。いったい誰が撮影していたのか。24時間365日欠かすことなくクレムリンを撮影し続けているテレビカメラがあるならば捉えることもできよう。また、今回は軍事パレードの準備中ということでそのことでの撮影をしていたとも言える。ただ、そのどちらであろうとあまりにも偶然に過ぎる。

この件でロシアはどのような対応に出るか、また、ロシアの発表を受けてどのような世界世論が形成されるか。

本書は29の書籍を偽書として紹介しているが、ひょっとしたら、30冊目が誕生するかもしれない。