德薙零己の読書記録

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ジョナサン・ハイト著「社会はなぜ左と右にわかれるのか:対立を超えるための道徳心理学」(紀伊國屋書店)

自分のことを保守だと考えている人、中道だと考えている人、リベラルだと考えている人が、保守、中道、リベラルをどう考えているかの分析結果がある。自分をリベラルと自負する心理学者のジョナサン・ハイト氏の著作からの引用である。

戦争と平和とどちらが素晴らしいと考えるか?
保守:保守=平和,中道=平和,リベラル=平和
中道:保守=平和,中道=平和,リベラル=平和
リベラル:保守=戦争,中道=戦争,リベラル=平和

社会福祉をどう考えるか?
保守:保守=重要,中道=重要,リベラル=重要
中道:保守=重要,中道=重要,リベラル=重要
リベラル:保守=弱者は切り捨て,中道=弱者は切り捨て,リベラル=重要

また、面白いエピソードもある。
自分のことをリベラルと自認する人が、自分と考えを等しくする仲間を募ろうとした。
その人が考える自分の仲間とは、知性が高く、自由を愛し、豊かさを愛し、平和を愛し、環境問題にも熱心で、全ての差別を許さず、人権意識も高く、格差問題の解消のための税制改正も訴え、教育費の公費負担も医療費の公費負担も同意するという人である。
その結果、リベラルを自認する人の周囲には物の見事に、それまでその人が敵と考えてきた保守的な人が集まった。

自分をエリートと考え、自らが所属する集団だけが常に正しく、自分の意見は間違っておらず、間違っているという証拠を他人から突きつけられても別の理論で自分の意見の正しさを上から目線で攻撃的に訴える。
ゆえに嫌われる。

リベラルの不人気の理由として、自分が大切に考えていること(たとえば平和や社会福祉)を、自分と異なる意見の人は大切だと考えていないどころか切り捨てるものと扱っていると考え、倒すべき敵と認識し、「正しい意見を持つ自分たちが敵を退治してあげなければならない」と考えているというのがジョナサン・ハイト氏の主張だ。