德薙零己の読書記録

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

マイケル・リンド著「新しい階級闘争:大都市エリートから民主主義を守る」 (東洋経済新報社)

 

現在社会の問題の根源を本書は、左右での争いではなく、社会的な上下が生み出す対立であると説いている。そう言えばマルクスは人間の社会の歴史を階級闘争の歴史であると説いたが、同時に段階発展論を展開することで最終的な帰結を示すともした。楽観的な考えだとするしかない。

最終的な帰結ではなく常に新たな問題が生まれて問題となり、そして解消に向かいつつもまた新たな上下関係が生まれて問題となり、解消を求め動きながらさらにまた別の上下関係が生まれる。

人類の歴史はその繰り返しだ。問題放置を良しとはしないが、無限に現れる問題を事前に無くすことはできない。

新たな問題が生じてしまったがために苦しい思いをすることとなった人を如何に救い出すか、それは、単に金銭や物資を配るのではなく、その人の社会的存在価値を如何に構築するかが問われる。

問題を指摘するところまではポピュリストでもできる。だが、構築はどうか?

本書にはその答えがある。