德薙零己の読書記録

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

ピーター・バーク著「知識の社会史」(新曜社)

知識をいかにして身につけるかに苦慮する人は多いであろうが、知識を身につけることが許される社会を創り上げて維持することはさらなる苦慮である。
知識が一部の人の独占物であり、知識の伝達が許容されない社会は過去の話ではない。現在も善意の名の下で、知識の伝達を閉ざす動きがある。

また、知識の伝達には特殊な技能を必要とする。Twitterを利用できる人の多くは自覚していないであろうが、文字を読み、文字を書くというのは特殊な技能であり、特別な環境を必要とする。文字を介在させて知識を伝達するためには文字を理解すると同時に、紙やペンも必要とする。

現在の情報化社会は必ずしも紙もペンも必要としない知識の伝達を可能とする社会を構築したとも言える。と同時に、誰もが情報発信者となることのできる社会を構築したとも言える。これは情報統制とは真逆の言論の自由、そして、知識伝達の解放であるとも言える。

また、既に千年以上の歴史を持つ文字に頼らない知識の伝達も無視できない。マンガだ。広義では絵巻もその例に含まれると言えるが、現在の出版で無視できぬ刊行数を叩き出しているマンガは、文字情報に絵画を付加した作品を作り上げることで新たな表現とより幅広い知識の伝達を可能としている存在だ。

そうしたマンガをネット上に載せるというのは、新たな表現の創出と知識の伝達とを可能にさせているということでもある。TwitterをはじめとするSNSに数多くの漫画が掲載されているのは、表現者の自己表現の方法であると同時に、より幅広い表現の創出と知識の伝達の役割をになっている。

ところで私はコミPo!というソフトを使ってマンガを作りネットに公開している。先に、文字を読み、文字を書くというのは特殊な技能であると書いたが、マンガを描くというのもまた特殊な技能だ。絵が苦手な人はマンガを描けないが、コミPo!は描画が苦手でもマンガを作り出せるというソフトだ。

もしかしたら、コミPo!は作品の創出だけではなく知識の伝達という点でもかなりの可能性を秘めている存在なのではなかろうか。
読後に思い浮かんだのはそうした感情だった。

www.comipo.com