德薙零己の読書記録

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アンドリュー・S・グローブ著,小林薫訳「HIGH OUTPUT MANAGEMENT:人を育て、成果を最大にするマネジメント」(日経BP)

HIGH OUTPUT MANAGEMENT

以下の設問を考えていただきたい。

トーストは1分で焼き上がるが1度に2枚までしか焼けない。

ゆで卵は3分かかるが1度に8個まで茹でられる。

4人に対し、1人あたり2枚のトーストと2個のゆで卵を配るのは、たぶんひとりでできる。

だが、配る相手が100人ならどのようにすれば良いか?

最初から100人とわかっていればトースターを増やしたりゆで卵を作る鍋を増やしたりもできるだろう。需要予測が分かれば回答を示すことができる。

では、何人に配らなければならないか事前にはわからないとしたら?

事前に予測するにしても、外れることもあるのが普通だ。足らなかったり、多すぎたりするというのは珍しくもない。

その最適解をいかに導き出すかが管理職に求められることである。

本書は、インテルの創設に参画し、同社を世界的な半導体企業へと導いた伝説的経営者であるアンドリュー・S・グローブ氏が、後進の起業家、経営者、マネジャーに向けて書いたマネジメント論であり、冒頭に記したのその設問の一つである。

著者は本書において、自らの経験に基づいて成果を最大化するためのマネジメントのあり方を説いている。マネジャーの役割、目標設定と達成、チームワーク、コミュニケーション、人材育成、意思決定、問題解決、リーダーシップといった、マネジメントに関する様々なトピックを扱っているのが本書だ。

本書の中心テーマは「成果を最大化するためのマネジメント」である。マネジャーの仕事とは、チームのパフォーマンスの最大化に向け、アウトプットを増やすことであると定義し、そのための具体的な方法論を説いている。

その成果を最大化するためには、優秀な人材を育成することが重要である。すなわち、人を育てるマネジメントである。マネジメント層になると部下を育てることとなる。そうした面々に対して著者は、部下の能力を引き出し、成長を促すためのマネジメントのあり方を説いている。

それこそが、本書に於いて著者が定義しているリーダーシップである。マネジャーは、チームを導き、成果を達成するためにリーダーシップを発揮する必要があるとしている。

本書は、マネジメントに関する様々な知識やノウハウが詰まった、非常に実践的な一冊である。著者の豊富な経験に基づいた事例やアドバイスは、説得力があり、明日からすぐに実践できるものばかりである。マネジメントについて学びたい人、成果を上げたい人、チームをまとめたい人、人を育てたい人、そして、年齢のために上司とならざるをえなくなった人に向けて役立つ一冊である。