ビジネスを成功させるために欠かせないのはロイヤルカスタマーの獲得と維持である。ドラッカーはマネジメントを顧客の創造とイノベーションにあると説いたが、その顧客の創造と類していると言えよう。
そして、ロイヤルカスタマーの獲得についておもてなしによる感動体験必要だと思われているが、本書はその概念を否定している。感動的な顧客サービスは、顧客ロイヤリティを上げていくことには関係がなく、ある程度の顧客サービスを行なっていれば顧客ロイヤリティは一定に保たれるという結論を導き出している。
さらに本書は手厳しいことを書き記している。問題解決のために顧客対応した場合、顧客ロイヤリティは上がるどころか4倍の悪影響を及ぼすというものである。その理由の一つとして、商品についてポジティブな体験をしても25%しか周りに伝えないのに対して、顧客サービスでネガティブな経験をしたら65%が周りに伝えるという事実を挙げている。
では、どのようにすれば顧客ロイヤルティを築き、維持することができるのか?
あらゆる場面で顧客を喜ばせることよりも、顧客の労力を軽減すること、つまり顧客にとってビジネスをしやすくすることこそが真に満足する顧客を生み出す鍵であると著者らは主張する。
わかりやすい例としてアンケートがある。
サービス向上のためのアンケートを回答することの面倒くささを感じたことのある人は多いであろう。中にはアンケートに不満を書き記す人もいるであろうが、不満を感じなかった人にとってはアンケートに書かせることそのものが新たな不満を生み出すものである。顧客ロイヤリティを高めてロイヤルカスタマーを獲得することを最終もくと期とするサービス向上のための施策がまさに、顧客ロイヤリティを低めてロイヤルカスタマーを失わせてしまう結果となってしまうのである。
本書は企業がカスタマーサービスにアプローチする方法を提供刷る書籍であるが、有用となるのは企業だけではない。人との関係を考えた場面で有効なアイデアを提示する書籍である。