德薙零己の読書記録

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井上義和&牧野智和編「ファシリテーションとは何か:コミュニケーション幻想を超えて」(ナカニシヤ出版)

ファシリテーションとは何か―コミュニケーション幻想を超えて

ファシリテーション(Facilitation)。本来の意味は、「容易にすること、簡易化、促進」。

ビジネスや教育の現場では、会議や研修、セミナーなどのグループ活動を円滑に遂行するために働きかける技法を指し、特に会議やミーティングなどの場面で、参加者同士のコミュニケーションを促進するためのサポートを意味することが多い。

ビジネスシーンにおけるファシリテーションとしては、参加メンバーの発言を促しながら、多様な意見を瞬時に理解・整理していき、重要なポイントを引き出しつつ、議論を広げ、最後には議論を収束させ合意形成をサポートする一連の行動を意味する。

本書は、ファシリテーションの本質とその社会的影響について深く探求している一冊であり、コミュニケーション能力が求められることの多い現在、ファシリテーションの側面からコミュニケーションを論じている。

以下が本書執筆にあたられた方々である。なお、肩書きは本書刊行の2021年末時点の肩書きである。

【編著者】

・井上義和
  帝京大学共通教育センター教授

・牧野智和
  大妻女子大学人間関係学部人間関係学科准教授

【著者】

・中野民夫
  東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授
  ワークショップ企画プロ

中原淳
  立教大学経営学部 教授・大学院経営学研究科 リーダーシップ開発コース主査

・中村和彦
  南山大学人文学部心理人間学科教授
  南山大学人間関係研究センターセンター長

田村哲樹
  名古屋大学大学院法学研究科教授

・小針誠
  青山学院大学教育人間科学部教育学科教授

・元濱奈穂子
  東京大学大学院 教育学研究科 総合教育科学専攻 比較教育社会学コース 博士課程

本書では特に、前段に記したビジネスシーンに限らず、ファシリテーションの技術的な側面を超えてその社会的な意義に焦点を当てていることに着目すべきである。著者たちは、ファシリテーションがどのようにして社会のあらゆる場面で重要性を持つようになったのか、その背後にある動向と理論について詳しく説明している。

特に着目すべきなのは、複数の著者が最新の研究成果を寄稿している点である。それぞれが自身の視点からファシリテーションについての洞察を提供しているため、読者は多角的な視点からファシリテーションを理解することが可能となっている。