德薙零己の読書記録

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新保恵志著「金融サービスの未来:社会的責任を問う」(岩波新書)

金融サービスの未来 社会的責任を問う (岩波新書)

銀行がニュースとして取り上げられる場合、そのニュースの内容が喜ばしい内容である可能性は低い。全くのゼロとは言えないが、一〇〇対一ぐらいの割合であろう。

銀行に限らず、金融全般についても同様のことが言える。金融に関するニュースの内容でポジティブになれるニュースはそう多くはない。例外としてはビジネスニュースがあるが、それでもポジティブなニュースの割合が高いというだけで、ネガティブなニュースと無縁というわけではない。

本書に記されているのは金融の未来である。それもあまりポジティブになれそうにない未来である。特に私にように金融を職業としている人間にとってはあまりポジティブになれるような内容など記されていない。金融を職業としない人のうちの一部は勝者に、残る大部分の多くは現状維持に留まり、中にはマイナスに陥る人もいる。

どうしてこうなってしまうのか?

本書は近年に起こった金融ニュースの振り返りと、現在進行形で進んでいる金融の在り方の変化、そして、未来の金融の在り方を記した一冊である。他に書評を書いた方の中には「この本を読んで銀行の方々にむしろ同情するようになった」とまで記されている。私も前提知識無しではそのように感じる。

ただし、私には一つだけ、偶然というか、必然というか、身につけている前提知識がある。その上で記すと「銀行を甘く見るな」。既に対応は始まっているし、何なら、その対応が私の仕事である。

たとえば、以下のページを2024年の現在になって読むと「ああ、このことか」と感じる人が多いであろうが、忘れてはならないのは、本書刊行年が2021年だということである。つまり、現在の対話型AIはさほどニュースとなっていない時代に記された書籍である。

守秘義務があるため詳しく記すことはできないが、金融機関は既に未来に向けて動いている。気づいたときにはその未来の形が社会に登場しているようになる。そのときの前提知識として本書を読んでおくのと未読のままであるのとでは大きな違いとなるであろう。